桜上水
東京都杉並区下高井戸2〜4丁目周辺
「小金井の桜」が有名な割には、わたしにとって玉川上水の桜は印象が薄い。三鷹駅から境浄水場あたりまでの区間の桜が思い浮かぶほかは、コナラなど武蔵野の雑木林が延々と続くイメージがある。
流れが都心に近づき、その武蔵野の雰囲気が薄れてしまった頃、暗渠化された上水跡の遊歩道に桜並木が現れる。玉川上水の桜が駅名の由来になったといわれる京王線桜上水駅付近だ。
開業当時の駅名「北沢車庫前」が「桜上水」に変わったのは昭和12年(1937)。後に入水心中をする太宰治はまだ「走れメロス」も書いていなかった。身投げできるほど水量豊かだった流れも、その川岸を彩る桜の景色も想像できないほど辺りの景色は変わってしまった。
人気のない児童公園で老木に昔のことを訪ねてみたが、桜はかすかに枝を揺すって花びら数枚を返してくるばかりだった。
(参考)2007年の東京の桜開花宣言は、3月20日でした。