平蔵地蔵
東京都品川区南品川3-5-21（海雲寺）
昔（1980）大貫さんという人が銀座で一億円を拾って話題になったことがある。落とし主は現れずに大金は手にしたものの、やっかみ半分のマスコミに追い回されて苦労をしたらしい。その後も竹やぶから2億円が出てきたり、ゴミ捨て場や用水路に大金が捨ててあったりしたが、プライバシーを尊重して拾い主の名前は報道されなくなった。
京浜急行・青物横丁駅前の海雲寺には、拾った大金のために命を落とした人を供養する地蔵尊が祀られている。彼は拾った金を正直に落とし主に返したために、分け前を当てにしていた仲間に疎まれて命を落としたのだ。
海雲寺は旧東海道に面しており、歴史探訪ウォーキングの途次に立ち寄る人が後を絶たない。由来を記した碑の前に立った人たちは静かに碑文を読んだ後、皆一様にやるせない気分で空を仰ぐと、救いを求めるかのように本堂へと向かっていく。
振り仰いだ空はどこまでも青く、人をうらやんだり妬んだりする心を洗い清めてくれるかのようだ。