鯨碑(鯨塚)
東京都品川区東品川1-7-17(利田神社)
江戸時代の目黒川河口には長い砂洲があり、川は砂洲に沿って今の八ツ山通りのところを北に流れ、去年(2006)できた品川浦公園の先で海に出ていたようだ。その砂洲の突端に建っていた洲崎弁天は、利田(かがた)神社と名前を変えて公園の隣に残っている。
公園に置かれている鯨の形をしたモニュメントや遊具は、この利田神社に保存されている鯨碑(鯨塚)に由来するものだ。寛政十年(1798)に嵐にあって江戸湾(東京湾)に迷い込んだ鯨を品川の漁師が捕え、ここに葬ったという。
外房総の勝浦周辺で槌鯨(ツチクジラ)漁が行われてはいるものの、江戸の人々がクジラを目にすることは珍しく、思いがけない大魚の出現に大騒ぎになった。
動物園や水族館もなかった昔、江戸を騒がせた動物としてはほかに、享保十四年(1729)に将軍吉宗に謁見した象、文政四年(1821)に見世物にされた駱駝などが有名で、残された瓦版や錦絵で当時の様子を窺い知ることができる。