自由学園 明日館
東京都豊島区西池袋2-31-3
サイモン&ガーファンクルの「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」(※)は不思議な曲だ。有名な建築家に対して、「あなたの作った歌を、毎晩朝が来るまで声をそろえて歌っていましたよね」なんて歌っている。
そのフランク・ロイド・ライトが大正10年(1921)に設計した自由学園明日館の食堂でお茶とケーキの休憩をとっていたら、この曲のことがふと思い出された。建物を飾る幾何学模様のリズムや、大きな窓から射込む光と室内にわだかまる幽かな陰のハーモニーが「彼の作った歌」なのかもしれない、と思ったのだ。
ニューヨークのグッゲンハイム美術館やペンシルバニアの落水荘がどんな歌を歌っているのかは分らないが、ここでは、保存のため昔のままに照明のレベルを落した温もりのあるほの暗さに、しっとりとしたボサノバ調のあの曲がよく似合うような気がした。
※ So Long, Frank Lloyd Wright (Simon & Garfunkel、1970)