御殿橋の道標
東京都八王子市鑓水2039付近
大栗川上流の御殿橋の親柱には橋の名前とならんで「絹の道」と記されている。橋の両側に延びる道は、八王子から横浜を経て海外へ輸出する生糸の輸送で賑わった道だ。「絹の道」の名は戦後、郷土史家・橋本義夫氏によって命名された。
橋の袂に江戸時代末期の古い道標が建っている。正面(北面)には「此方八王子道」、向かって右側に「此方 はし本 津久井 大山」、左側には「此方 はら町田神奈川 ふじさわ」と彫られ、肝心の「横浜」がないのが気にはなるが、絹の道の往来を今に伝える貴重なものだ。
道標の正面には鑓水商人の像が彫られているらしいのだが、雨風に打たれてその姿は判然としない。明治41年(1908)の横浜線開通によって歴史の表舞台から去った彼らの姿を象徴しているかのようで、なんだか少し切なくなる。