2008年2月20日(水)

ありがた山

東京都稲城市矢野口3159

ありがた山

ありがた山の山道は奇妙な静けさに満ちていた。多摩の裏山に登った時にいつも感じる「都会の喧噪を離れてほっとする」という類のものではない、ピリピリとした緊張感をともなった静寂。黙して語らない無表情な石たちに囲まれて、「みんなどこへ行ってしまったんだ!?」と叫びたくなるような不安。

聖地

最下層の「地」の部分が人の背丈ほどに伸びた五輪塔に導かれて山道を登っていく。「導かれて」と書いたが、石柱には意味のわからない梵字が数文字彫られているほかは真っ白で、導くどころか一切の交渉を断ってそっぽを向いているようにさえ見える。たどり着いた山頂とおぼしきところに建つ石塔も無言だ。

中腹に整然と並ぶ墓碑や石仏は、ある宗教団体が昭和15年(1940)〜18年頃に駒込付近の寺院にあった無縁仏を集めてきたものだという。石塔の建つ場所は、その宗教の聖地であるらしい。西日が長い影を落す山頂で、無言の塔はこちらには見向きもせず、静かに何かを待っているように見えた。