明白院のしだれ梅
東京都青梅市日向和田2-395
それはみごとな梅の木だった。梅と言えば、ひねこびてゴツゴツとした枝振りに加え、梅干から梅干婆を連想して、桜のような華やかなイメージからは遠いところにあるものだと思って来た。ところが、目の前のしだれ梅はそんな姿をきれいな着物で包みこむように、満開の花をつけた枝をいっぱいに広げて若々しい。
「ちょっと着物の裾から手を入れてみようか」
そんなエロ親父の空想を働かせて、枝垂れている花に触れてみた。心地よい梅の芳香に「悩殺」という言葉を思い出す。もうしばらく、そんな思いはしていないなぁ。
しだれ梅の脇の階段を境内へ向って登っていく。階段の上の日だまりに座り込んで一息つくと、多摩川の谷を隔てた向うの山と青空が清々しく見えた。しだれ梅は高貴な姫君のように毅然としている。築地塀の上からあふれるように咲く梅は、元気いっぱいで健康的だ。
さっきの想像を、ちょっと恥ずかしく思った。
※ 2013年春、プラムポックスウイルスに感染したため伐採されてしまいました