池袋富士塚
東京都豊島区池袋本町 3-14-1 (氷川神社)
富士山には夜に登るもんだと父親に教えられた。そうして、早朝に山頂に立って御来光を仰ぐのだと。父もわたしも富士山信仰の信者ではないけれど、高山の上から見る日の出には自然の美しさを超越して神々しく心打たれるものがある。
夜に登るのには別の意味もあって、山谷が無く高い木も少ない富士山には木陰が少なく、日中に登るとバテやすいのだ。もちろん3,000mを越える高峰の夜は真夏でもかなりの冷え込みになるけれど、遮るもののない陽射しよりは良いと父は言った。
富士山に登ったのは、その話を聞かされた中学生の時が最初で最後になったけれど、今の人も夜に登っているのだろうか。
池袋冨士のうえに深い影を落して緑の葉を揺らす大木を見て、ふとそんなことを思い出した。