ヒメザゼンソウ
東京都西多摩郡日の出町大字大久野1310番地
ヒメザゼンソウという、ちょっと不思議な姿をした花の群生地が平井川の上流にあるというので、6月上旬という開花時期を狙って行ってみた。
「羽生人形店駐車場の奥」というキーワードを聞いてそれなりに家のある集落を想像していたのだけれど、周囲は田畑や雑木林が広がる山里。平井川を渡る橋の欄干にはトウキョウサンショウウオが描かれ、なんとも秘境っぽいイメージだ。
ところが、現地について教育委員会の説明板を確認し、周囲を探してみるのだがそれらしい場所が見あたらない。尋ねてみるような人影もなく、自転車を置いた駐車場に戻ってぼんやりしていたら、駐車場の縁に咲いた数輪を見つけた。百人一首で法師たちが着ている、後ろ襟がピンと立った法衣のようなものを纏って小さな花が座禅を組んでいる。
これを群生地と言うには寂しすぎる。でも、静かにひっそりと咲く小さな花は、その場所を探さないでくれと言っているかのようだ。どこか別のところにあるかもしれない群生地は秘密のまま、そっとしておきたい気持になってその場をあとにした。