2008年9月6日(土)

さいかち窪

東京都東久留米市柳窪3-5(小平霊園内)

流れ

小平霊園の案内図を見ると、整然と縦横に仕切られた園内の中ほどに、その秩序を乱して青梅街道から何ものかが侵入してきたかのように丸く道が押しのけられたエリアがある。エリアの中は「さいかち窪」と呼ばれる窪地になっていて、鬱蒼と茂った雑木林がここだけ違った雰囲気を醸し出している。

さいかち窪

荒川の支流・黒目川はこのさいかち窪の湧水を源流としているのだが、近年は水が枯れていることが多く「幻の湧水」と言われていた。そこに、久しぶりに流れるほどの水が湧いた、と聞いて早速行ってみた。

今年は8月の後半からずっと雨続きだ。それも水害や土砂災害をもたらすほどの、局地的で突然の豪雨が各地を襲っている。それが湧水の復活をもたらしたようだ。

そんな暴力的な雨のイメージとは正反対の、静謐で穏やかな空気が湧水のまわりに満ちている。まだ日は高いのに、聞えてくるのはヒグラシの声。噂を聞いて集った人たちは皆、源流という言葉にぴったりの神秘的な雰囲気に打たれたように、ただ黙して水に映る木々の影を見つめていた。