六義園のしだれ桜
東京都文京区本駒込6-16-3
日が沈むと、太陽に置いてきぼりを食らった青空が、隠れ場所を探して下界へ降りてくる。街は藍色に染まり、一時(いっとき)たそがれ時のしじまに包まれる。
たそがれは「誰そ彼」。向こうから歩いてくる人の顔が判然としない、彼は誰だろう、ひょっとしてこの世のものではないかも知れない。逢魔が時とも言われる時間帯だ。
もしかしたら今、まわりに見える人影の半分は人ではないかも知れないと思った時の、不思議に昂ぶる気持ち。その気持ちを抑えきれずに、人は夕闇に続く夜の闇へと歩み入る。
ライトアップというイベントはいつから始ったのだろうか。闇の中にぼぉっと浮かび上がる姿は、わたしを異界へといざなう。向こうの世界に足を踏み入れ、その妖しい光に酔いしれてふと振り返ると、そこにうずくまる闇の深さにわたしは帰り道を失って慄然とするのだった。
(参考)2009年の東京の桜開花宣言は、3月21日でした。