八王子城跡
東京都八王子市元八王子町3-2715-2
小学校で記憶に残る初めての遠足は平山城址公園だった。それ以来、城跡を見つけるとふらふらと吸い寄せられてしまうのだが、そうしてみると多摩地区には結構たくさんの城跡がある。
城と言っても多くは、姫路城などのように天守閣や石垣を備えた立派なものではなく、領主の居館や防衛ラインとしての砦であったようだ。
国史跡に指定されている八王子城は、後北条氏の本拠である小田原城の最大の支城といわれ、滝山城から移ってきた北条氏照の居城だった。発掘調査では瓦が見つかっていないと言うから、想像される「城」とは違って板葺きの普通の館だったようだが、当時には珍しい石垣が見つかっており、中世の山城から近世の平城へ移行する端境期の特徴を持っている。
天正十八年(1590)六月、秀吉方の前田利家・上杉景勝率いる一万五千の兵に攻められ、城は一日で落ちた。見せしめのため徹底的な殲滅が行なわれ、これが契機となって小田原城は開城、北条氏は滅びた。
蹴上の高い石段を苦労して上がり、冠木門(かぶきもん)をくぐって御主殿跡に出ると、ただただ広い空間が広がっていた。落城以降、ほとんど手つかずだったという緑深い遺構には、「山の中だから」というだけではない何か神秘的な静けさが眠っているような感じがした。