矢島稲荷の大ケヤキ
東京都府中市宮西町4-3-2
練馬白山神社の大ケヤキ、御岳山の神代ケヤキと並ぶ都内屈指の大ケヤキは、甲州街道の札の辻からちょっとはいった駐車場の片隅にひっそりと佇んでいた。
大國魂神社の参道(馬場大門欅並木)に大きく枝を広げた木々に比べれば、背も低くずんぐりむっくりで全然パッとしないけれど、年輪を重ねた樹幹は太くいのちの迫力を感じさせる外観だ。老いたとは言え、三度の火事をくぐり抜け、樹幹が空洞になっても緑の葉を茂らせる生命力には目を見はる。年老いて背中は曲がってしまったが、節くれだった手に鍬を持って今日も黙々と畑に出て行く老爺という感じだろうか。
樹齢800年余りというから、鎌倉時代からこの地を守っていることになる。この木と共に暮してきた人々は、その間に一体何代を経ているのだろうか。大きな樹を見たときのいつもと変わらない感慨ではあるけれど、その時の長さを思うとただただあっけにとられ、梢を見上げて呆然と立ちつくしてしまう。
道路に面した四方を住宅に囲まれ、ケヤキを中心としてぽっかりと空いた空間は、まるで老樹の霊力によって封印された結界のような不思議な雰囲気を漂わせていた。