神代植物公園バラ園
東京都調布市深大寺元町5-31-10
学生時代に観た映画の中に、若い女性がバラの咲く庭園を訪れるシーンがあった。彼女は、まだ開ききっていない半開きの花の中心に入れた指を、幾重にも重なった花びらをこじ開けるようにゆっくりと回している。まだ半分子どもだったわたしにもそれとわかるエロチックな表現に、ドキドキしながら目が釘付けになったことを覚えている。
四季を通じて色とりどりの花を楽しめる神代植物公園には、都内でも有数規模のバラ園がある。今は「春のバラフェスタ」を開催中で、ミニコンサートやライトアップイベントなど催し物が盛りだくさんだ。
満開のニュースを聞いてきてみたけれど、花の状態は盛りを少し過ぎたところで、強い陽射しを受けて疲れ気味の様子だ。写真を撮っていると後ろから、「もう開き切っちゃって私たちみたいね」と声高に話す年配の女性たちの声が聞こえてきた。
思いがけず、冒頭に書いた映画の一シーンが甦る。目の前にはやっと見つけたまだ若い花が微笑んでいて、強い香水のような香りが漂っている。何かいけないものを見てしまったような気分がして、思わずファインダーから目をそらせてしまった。