松姫墓所
東京都八王子市台町3-18-28(信松院)
たとえば「栄華を誇った平家は、1185年壇ノ浦の戦いにて滅亡した」と何気なく言ってしまうけれど、「滅亡する(亡びる)」というのは大変なことなのだ。総選挙で負けても麻生家や自民党が亡びることはないけれど、長い歴史の中ではその変わり目ごとに多くの命が失われ、その血脈を絶たれている。
戦国時代の武将・武田信玄に松姫という娘がいた。幼少の頃、織田信長の長男・信忠と婚約するが、両家の対立により破談。その後、戦を避けて武田の旧臣たちが多く住む八王子・恩方の地に逃れた。
武田氏滅亡、織田信忠もまた本能寺の変で落命という情勢の中で、山道を隠れるように辿ったであろう道行きは、心身共に辛く苦しいものだっただろう。平和な現代に住むわたしには、その胸の内は到底計り知れない。
戦乱の世に翻弄された彼女は出家して尼僧となり、八王子の信松院で土地の子供たちに読み書きを教えるなどして平穏に暮したという。その後日談に救われる思いがする。