小机家住宅
東京都あきる野市三内490
JR武蔵五日市駅から日の出町方面へ北上する秋川街道は小机坂を上っていく。この坂の頂上附近にあるバス停の名は小机。この付近の字(あざな)だ。そして、そのバス停の脇に小机家がある。
小机に住んでいるから小机家か、小机家があるから小机か、いずれにしてもこの土地を代表する名士であるらしい。
その小机家の第7代当主が明治8年(1875)頃に建てた洋館は、庭に椰子の木でもあればどこか別の土地かと勘違いしそうなコロニアル風の建物で、東京都の有形文化財に指定されている。普段は公開されていないが、東京都文化財ウィークの特別公開の機会を利用して見学に訪れた。
バルコニーを支える柱はドーリア式を模しているというけれど、ギリシャ建築の重々しさはなく、軽やかで日本の雰囲気に合っている。真っ白な外観は土蔵のようにも見えて、まだ洋式を消化し切れていない擬洋風が微笑ましい。
玄関アーチの上から口の曲がったガーゴイルが皮肉っぽい顔をして来訪者を出迎えていた。中にはいると、鏝絵のウサギに出迎えられ、瀟洒な外観とは裏腹に純和風の居室が並んでいる。鹿鳴館もまだ出来ていなかった時代に、洋館を建ててはみたものの、一般にはまだ洋風の暮らしは馴染まなかったようだ。