2010年1月4日(月)

小津坂

東京都八王子市上恩方町

恩方

モリアオガエルの道から10%の急坂を登って小さな峠を越え、陣馬街道に向って駆け下りる途中、急にまわりの樹木が無くなって視界が開けた。「夕焼け小焼け」の唄に歌われた山里ののどかな風景が目の前に広がっている。その絶景にため息をついて自転車を降りた。

道の傍らに、お墓が建っていた。ポカポカと陽の当たる小津坂の南斜面に立って、御先祖様は子孫の暮らす恩方の里を静かに見守っている。

すぐ目の前には携帯電話のアンテナが立ち、奥の方には夕やけ小やけふれあいの里の三角屋根。その間に、色とりどりの屋根が散らばっている。いつからここにあるのかはわからないけれど、最初に墓が建てられた昔から、緩やかに景色は変ってきていることだろう。移ろいゆく景色と時の流れをどんな思いで眺めてきたのか。

「わしらの住んだ藁葺の家はなくなってしまったのう」「あのおかっぱ頭の女の子も、素敵な娘さんになったねぇ」「あの歩きながらぶつぶつ言ってるお人は、誰と話してるんだろうか」。そんなささやきが聞こえるような気がした。