椿守稲荷
東京都町田市大蔵町3092
神社の境内に木が生茂っているのが鎮守(ちんじゅ)の杜。ところがこのお稲荷さんは、その境内が二本のツバキの大木で覆われている。だから椿守(ちんしゅ)稲荷という。庭の片隅でひっそりと咲いているイメージのあるツバキが、こんなに大きくなるものだとは思わなかった。
春といえば梅や桜ばかりを追いかけていたけれど、ツバキ(椿)は木偏に春と書くまさに春の花。青々と茂った葉の間から大きな赤い花がいくつも顔を出して春を謳歌している。
ツバキは傷みの目立つ花だ。傷ついたり色が変わったりしたまま、咲き続けている姿をよく見かける。それが老醜をさらしているようで、わたしはあまり好きではなかった。花びらが黄ばんでも咲き続け、最後の最後にぽとりと花を落として息絶える。その姿が哀しい。
それもまた一つの趣かと思えるようになってきたのは、やっと最近のことだ。桜を追いかけるのも疲れるよなぁ。そんなことを感じるようになった今日この頃、物静かなツバキの佇まいがそっと心の隙間に寄り添ってくる。