カタクリとニリンソウ
埼玉県所沢市城73(滝の城址公園)
柳瀬川とその支流東川の合流点の周囲には「城」という地名が付いている。不勉強でこれまで知らなかったのだが、八王子城主北条氏照の持城だったという滝の城(別名本郷城)に由来しており、本丸跡に建つ城山神社の周囲には今もその遺構が残されている。
その城址公園の一角でカタクリの花が咲き始めた。まだ数えるほどしかなく、保護柵から遠く離れてポツリポツリと咲いている。その回りを取り囲むように咲いている白い花はニリンソウだ。
まだ見頃ではないせいか訪れる人もなく、城址はひっそりとしている。その静けさの中でふと、各地にある城址公園はなぜ何百年も開発されることなくほおって置かれたのだろうか、という思いが湧いてきた。家も建たず、畑にもならず、こうして野草の咲く公園として残っている所がたくさんある。敗れた兵士たちの鎮まらない思いが渦巻いて、人を寄せ付けなかったのだろうか。
保護柵に寄りかかってそんなことを考えていたら、髪を振り乱した龍のようなカタクリの花が、その思いを代弁しているかのように見えた。