ハクモクレン
東京都青梅市柚木町1-4-1 即清寺
お姫様は、「老醜をさらしとうない」と言って泣くだろうか。それとも、「老いてなお矍鑠としてあることを誇りに思うぞ」と背筋を伸ばされるだろうか。
吉野街道を走って梅郷を過ぎ、吉川英治記念館にさしかかる手前の山側、茶色くなった花を一杯につけた大木を見つけて、一瞬ギョッとした。まさかとは思ったが、少し春の遅い山里で茶色いシミだらけになった花をつけたハクモクレンが最後の姿を見せている。こんなになっても花を落とすことなく、咲き続けている姿を見るのは初めてだ。
ハクモクレンから少し下ったところには、若々しい桜が陽を浴びて輝いている。やがてこの桜が潔く花びらを散らす頃に、ハクモクレンもその花をぽとりぽとりと落としていくのだろう。
いつか、春先の白無垢姿のお姫様を見てあげたい。