鬼切
東京都西多摩郡檜原村下元郷50番地付近
高校入学の挨拶に行った時、山岳部にはいるという私に伯父は、「遭難しないように胸ポケットに梅干しを入れて行け」と言った。保存食や気付けにするのかと思いきや、彼が言うには、
「霧にまかれて道が見えなくなったら、梅干しを口に含んで息を吐くんだ。そうしたら、霧が晴れて周りが見えるようになる。」
梅干しの殺菌・解毒作用や健康食品としての効能はよく知られており、それを超自然の力に結びつける民間信仰のようなものは昔から各地にあったようだ。米の飯を結んで梅干しパワーを閉じこめた「おむすび」には、昼飯の用だけではなく道中の御守りの役目もあったのだろう。「おにぎり」という呼び名には「鬼を切る」という厄除けの意味もこめられている。
檜原街道に「鬼切(おにきり)」というバス停(集落)がある。檜原村とあきる野市の境に近く、村に災いが入ってこないようにと言う意味で名づけられたのだろうか。
道中の安全を願って、鬼切で梅のおにぎりの記念写真を撮った。