不動滝(長井の大滝)
東京都西多摩郡日の出町大久野5356の奥
滝の前に立つと、さわさわと落ちる滝の音と、こぽこぽと流れる沢の音が前後から聞こえてくる。滝の全体を写真に収めようとして少し後ろに下がると、もう滝の音は聞こえない。ファインダーの向こうに音もなく落ちる滝を見ながら、今自分はどこにいるのだろうかと不思議な気分に捕らわれる。
北大久野川に沿って梅ヶ谷峠へ登っていく途中、太陽の家という施設の手前を右に折れて滝の沢林道にはいると、いきなりの急坂に思わず自転車から降りてしまった。坂は少し先の駐車場までのわずかな区間だが、その先は舗装が無く、林道とは名ばかりの山道になるのでそのまま自転車を牽いていく。朝露に濡れた草木が足や腕にまとわりついてこそばゆい。5分ほどで道が無くなり、その奥に幽けく落ちる不動滝が見えた。
あたりにはしっとりとした空気が満ちている。たくさんの命を宿す森に包まれて、心が静かに落ち着いていく。渓流を清冽な水がほとばしるダイナミックな涼しさはないけれど、別の意味でクールダウンできる場所が、そこにはあった。