神泉湯の碑
東京都渋谷区円山町23-4
京王井の頭線の神泉駅は、トンネルの中にある。渋谷行きの電車は、駅を出ると一瞬陽を浴びてまた道玄坂の下をくぐるトンネルに入っていく。駅前でトンネルを出るのはそこが谷になっているからで、昔はその谷地に泉が湧いていたそうだ。
『新編武蔵風土記稿』には、仙人がこの湧水(霊水)で不老不死の薬を練ったために「神泉谷」の名がついたと記されている。明治になるとこの話が「弘法大師が開いた湯治場」と変化して、ここに弘法湯という浴場が建てられた。
駅前にある石碑は明治十九年(1886)に建てられたもので、正面に「弘法大師 右神泉湯道」と記されている。大山街道(246)を往来する富士講や大山講の旅人たちを導く道標だったのだろう。
渋谷の町の発展とともに、弘法湯のまわりは湯治客を相手にする花街として賑わっていく。それがいまの円山町・道玄坂周辺のホテル街の起源なのだという。