旧乃木邸
東京都港区赤坂8-11-32
表参道から赤坂に向かう途中、青山墓地を抜けたところでトンネルが現れた。真っ暗な車道は怖いので歩道に上がると、なぜか歩道はトンネルの外側にある。？？？と思っているうちに階段に突き当たり、自転車を担いでトンネルの上に登らされる羽目になった。
その高台の上にあるのが、明治時代の陸軍大将乃木希典の旧邸だ。
正門に向かって右手に煉瓦造りの塀が延びている。無骨で厳めしい洋館を想像して中にはいると、木造平屋の質素な住宅が現れた。レンガ塀に見えたのは厩舎で、人馬が逆転しているようなつくりがおもしろい。
建物の中には入れないので、斜面を利用した庭園を散策して下に降りると、「えい血之處の碑」が建っていた。明治天皇の崩御に殉じた乃木夫妻の、血のついた遺品を埋めたところという説明にドキッとする。「武勲をあげた偉人の家」というよりも、「夫妻が殉死した地」という側面の方が強く印象づけられる。都会の喧噪から離れられる静かな公園だと思っていたけれど、ちょっと複雑な気分になる場所でもあるのだ。
隣接する乃木神社は結婚式に人気があって、お日柄が良ければきれいな花嫁さんに出会うことも出来る。これからの季節は、かわいらしい七五三の子供たちも訪れることだろう。その華やいだ雰囲気が、少し救いになるかもしれないけれど。