帝蚕倉庫(旧横浜生糸検査所倉庫)
神奈川県横浜市中区北仲通5-57-2
いかにも間に合わせに作られたような駐車場の真ん中に、ポツンと残された煉瓦造りの倉庫。壁には「C」の文字。少し離れて建つ事務所の窓からは明かりが漏れているが、外見は取り壊し寸前の様子に見える。開いている入口に「北仲BRICK」、閉じている方には「帝蚕倉庫株式會社」の看板が掛かっていた。
日本の近代化を支えた養蚕・製糸産業のもと、かつての横浜は生糸貿易で栄えていた。ここは、輸出生糸の品質向上のために設立された横浜生糸検査所(通称キーケン)に付随して、大正15年(1926)に建てられた倉庫群の跡なのだ。検査所の建物は、隣接する横浜第二合同庁舎に復元・再利用されている。検査所、倉庫、倉庫事務所共に設計者は遠藤於菟。
倉庫はC棟を残して解体され、平成17年(2005)からアートスペース「北仲WHITE」として暫定利用されていた帝蚕ビルも取り壊されてしまった。一方で、事務所棟(北仲BRICK)には昨年、横浜国立大学を代表とする7大学による共同プロジェクト「北仲スクール(横浜文化創造都市スクール)」が開校し、「文化芸術創造都市の担い手」育成を目的とした活動が行われている。
運河の対岸では、赤レンガ倉庫(元新港埠頭保税倉庫)が多くの観光客を集めている。キーケン跡の再開発計画は進捗が遅れているようだが、今後どんな姿を現してくるのか、期待と不安を胸に完成を見守りたい。
※ 2016年から再開発の工事がはじまりました。解体・復元計画が策定され、何らかの形で建物は残されるようです。