カイザースラウテルン広場
東京都文京区小石川5-6
子どもの頃に読んだ絵本はみな、かわいい絵で飾られていた。「ぐりとぐら」も「たろうのおでかけ」も「ちいさいおうち」も。たまに芸術的なタッチで、少し怖いように思う絵もあったけれど、そういう世界もあるだろうなと納得して、特に違和感は感じなかった。
ところがある日マザーグースの絵本に描かれていたハンプティダンプティを見て驚いた。今風にいえばキモカワイイと言うのだろうか。卵の表面にリアルな醜男の泣顔が張り付いている。日本にも道具や日用品に顔がある妖怪(付喪神)がいたりハロウィンのカボチャにも顔があるけれど、そういうのとは違う生々しさというか、気持ち悪さが衝撃だった。
茗荷谷の筑波大学前にある小公園に、一角獣やアンモナイトと並んで置かれた人面魚を見て、あの時の気持ちを思いだした。
以前、ブリューゲルの展覧会を見に行った時にも、人面動物や頭足人間(グリロス)が登場する絵画や版画がたくさん展示されていたので、そういう表現を好んだ時代なのかアートの一派なのか、何かそういうものがヨーロッパにはあるのだろう。ここでも、メカっぽい堅いイメージの作品たちに混じって、ブニョブニョと柔らかい生身の顔が張り付いた魚が違和感なく存在している。
ちなみにこの顔はこの広場の名前にもなっているドイツのカイザースラウテルン市に縁のある神聖ローマ皇帝フリードリッヒ1世なのだという。皇帝は川で溺れて亡くなったと伝えられているが、それで魚に生まれ変わったという設定なのかな?