亀の首地蔵
広島県尾道市瀬戸田町沢339付近
散歩をしていて気になるのは道端のお地蔵さん。昔はどれもみなお地蔵さん(地蔵菩薩)だと思っていたけれど、グルグル回っているうちに、ほかにも庚申塔や馬頭観音などさまざまなバリエーションがあることもわかってきた。
でも、海路にまでお地蔵さんがいるとは知らなかった。
生口島と高根島を結ぶ高根大橋のたもとで瀬戸田水道をお地蔵さんが見守っている。たくさんの船が行き来する瀬戸内海ならではの風景だ。
訪ねた時には、名前の由来になった亀の甲羅を彷彿とさせる大岩が現れていたが、潮が満ちてくるとお地蔵さんだけが波間に浮かんでいるような景色になる。海が荒れれば波を被り、海中に没することもあるかもしれない。路傍の陽だまりでまどろんでいるような陸(おか)のお地蔵さんに比べて、なんと苛酷なお勤めを任されたことか。
それもまた仏の御心。お地蔵さんは静かに瞑目したまま、今日も海の安全を祈り続けている。