島ごと美術館 「ベルベデール せとだ」
広島県尾道市瀬戸田町荻2677付近 生口港
そんなつもりはなかったのだが、できた写真は意に反して水平線に沈む太陽を撮ったようになってしまった。小さな入り江には人影もなく、すぐ隣の小学校も廃校になってしまったようだ。そんな寂しい雰囲気が画像に写りこんでしまったのかもしれない。
生口港に設置された「ベルベデール せとだ」(川上喜三郎、1996)は、瀬戸田のレモンをイメージした鮮やかなレモンイエローの輪が印象的な作品だ。二重の輪の間にある水平のスペースは、水遊びをする子供たちの飛込み台になったり、イベントのステージとなって観客を集めたりすることもできる。
そんなふうにコミュニティの中心になる、ハレを演出する存在となることを作者はイメージしていたと思われるのだが、鑑賞者の気分によってこんなにも印象が変わってしまうとはなんだか申し訳ないような気がする。
水に浮いているように見えるけれど、潮が引くとジグザグになったスロープの先が浜辺に延びて舞台に上がることが出来る。
あの輪の中心に立って周りを見たら、また違った景色が見えることだろう。それを見てどんな気持ちが湧き上がってくるのか、次は試してみたい気がする。