2019年3月18日(月)

島ごと美術館 「うつろひ」「波の翼」

広島県尾道市瀬戸田町垂水 / 福田 境界付近の海岸

うつろひ

彼女は空に線が描きたかったのだという。キャンバスもアトリエもはみ出して、制約のない広々とした空に思いっきり自由な線を描きたかったのだという。

波の翼

「うつろひ」(宮脇愛子、1993)は、彼女がそうして世界中の空に描いてきたシリーズ作品のなかの一つだ。

実際に見るまでは風にそよぐしなやかな糸のようなものを想像していたのだが、実物は思ったより力強く、多少の風ではその姿を変えない強い意志のある線が瀬戸内の空に踊っていた。

反対に「波の翼」(新宮晋、1991)は、少しの風にも白い帆布の旗が反応して同じ形にとどまることがない。

時に風をはらむヨットの帆となり、時に島から島へ渡る蝶になる。あるいは、白いコートの裾を風にはためかせて、じっと海を眺める旅人の後姿か。

いろいろ想像してみるのだが、どれもいまいちしっくりと来ない。答えは風の中。いや、たぶん、どこにもないのだ。