しまなみ海道の思い出
東京都立川市曙町2-39 FARET立川 / 広島県尾道市瀬戸田町垂水1506-15 瀬戸田サンセットビーチ
「浮くかたち−赤/垂」(植松奎二、1994)
立川の雑踏の中でこの作品に出合った時、舞台の書割のように背景がバタバタと倒れて、その向こうに瀬戸内海の青い海と青い空が一瞬見えたような気がした。
目にも鮮やかな赤い三角錐は、忘れもしない生口島の瀬戸田サンセットビーチで出会った同じ作者の作品「凪のとき−赤いかたち/傾」(1989)にも使われていたモチーフ。距離と時間を越えて、二つのイメージが私の中で一つになった。
「空間の安定と崩壊の境目に成立する緊張」を表現したという作者の意図とは裏腹に、わたしの頭の中には、海辺の休日に味わった、全く緊張感のない真逆のイメージが浮かんでいる。作者には申し訳ないが、わたしはもう今後一切、この作品を緊張感をもって見ることはできないだろう。しかし、きっとFARET立川にあるほかのどの作品よりも愛着を持って楽しむことが出来る気がする。
FARET立川を訪ねるのは久しぶりだ。何度も近くを通りながら、もう10年以上ご無沙汰だった。でも、今後は、時々思い出に会いに来ようかな。