2019年7月10日(水)

マ マ ン

東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ 66プラザ

六本木ヒルズ森タワー

広場を行き交う人々を見下ろす大蜘蛛。不気味なクモを避けもせず、何事もなく通り過ぎる人たちの様子を見ると、CG合成のように見えるけれど、間違いなくクモはそこにいる。

クモの名はママン(MAMAN)。人を襲おうとしているのではない。その名のとおり、おなかに卵を抱えた心優しい母グモなのだ。か細い足を懸命に踏ん張って卵を守っている。

ママン

2003年にオープンした六本木ヒルズを代表するパブリックアートで、作者はルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)。1999年に制作され、ニューヨークのグッゲンハイム美術館をはじめ世界9ヶ所に同様の作品が展示されている。

クモで何かを表現しようとすれば、まず思い浮かぶのは蜘蛛の糸だろう。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」や歌舞伎「土蜘」で使われる「千筋の糸」。レース編みのようなクモの巣の網目模様もアートの題材になる。

対してクモそのものは、多くの場合コウモリやサソリのように悪者扱いだ。毒グモや人喰いグモが恐怖映画などに登場する。蜘蛛、蝙蝠、蠍、魑魅魍魎。漢字で書いたイメージも醜怪だ。だからママンを最初に見たときはギョッとした。

とは言っても、わが家では「朝のクモは縁起がいい」と伝えられてきた。クモはゴキブリなどの害虫を食べてくれるし、糸を引いて空から下りてくる様子は天からの使いのようだ。ママンだってよくよく見ればチャーミングな感じもする。

クモはみんなを守り幸せを運んでくれる存在だと知っているから、みんな安心してその足元を歩いていくんだね。