つちんど
東京都東大和市湖畔2丁目325-103 付近
キリンの出産を見たことがある。立ったままの母キリンからドスンと、まさに文字通り産み落とされた赤ちゃんは、まだ世の中の何たるかもわからないうちからヨロヨロと立ち上がり、はるか頭上にある母親のおっぱいを飲みはじめる。
そのおぼつかない立ち姿に似たオブジェを多摩湖自転車道の奥で見つけた。住宅街が切れてこの先が森になるという境目で、森に帰る道を探しているように見える。
こんなに日の当たる、なにも隠れるものの無いところにいたら誰かに襲われちゃうよ。ガンバって、早く逃げなきゃ。思わずその後ろ姿に声を掛けたくなる。
作品名は「つちんど」。
説明を読むと昔話題になったツチノコのことのようだが、三本足の姿に翻案されて現代的なイメージになった。
ツチノコについては、大きな獲物を食べて胴体の膨れた蛇を見間違えたのではないか、いや古い文献にも記載のある妖獣(妖怪)だ、などと喧々諤々の議論の末、捕獲したら賞金を出すという自治体も現れて町おこしにも一役買ったこともあったのだが、今も追いかけている人はいるのだろうか。