ラポルタ和泉(LA PORTA IZUMI)
東京都杉並区和泉1-4-8
散歩を始めた十数年前から、ずっと行きたいと思いながら、怖くて行けない場所がある。別に危険な場所だとか、そういうことではない。
なんと言うか、とり憑かれそうで怖いのだ。
梵寿綱(ぼんじゅこう)という建築家が建てたビルで、その名を和世陀(ドラード早稲田)という。内外装ともに過剰かつ意味不明な装飾で埋め尽くされていることで有名だ。
まだ和世陀を訪ねる勇気は湧かないけれど、今は遠出がままならないので、会社帰りに寄り道をして代田橋の梵寿綱建築を見てきた。
甲州街道から住宅街に折れて、まず目に飛び込んできた巨大なペガサスのレリーフに驚かされる。建物正面で体をくの字に折った女神の姿勢が苦しそうだ。入口の脇で吠えている悪魔が怖い。奇抜な外観は、初めて見ればショックだが、予備知識があればまずまずというレベルだ。
玄関から中を覗くと、暗いなかに複雑な装飾が溢れた、お伽の国のお城のような、というか魔女の住む占いの館みたいな感じにギョッとする。普通に住民のいるマンションなので、中までずかずかと侵入するのは憚られる。というか、はいったら最後囚われの身になってしまうかもしれないという妄想が頭に浮かんで、早々に逃げ出した。