2020年6月3日(水)

Singing Man

東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティ サンクンガーデン

全身

巨人は空を仰いで口をパクパクさせ、なにか独り言のような、御詠歌のようにも聞こえる低く短調な歌を歌っている。

上半身

神を賛美しているのか、恨み言を言っているのか。あるいは世界中の困難と闘っている人々を励まし、彼らを支えている人たちに感謝の歌を奉げているのか。

周囲に人影はなく、彼の歌に耳を傾ける人もいない。

新型コロナウィルス(COVID-19)禍の影響で、多くのアーティストたちが発表の場を失い、われわれも彼らの音楽、演劇やアートに触れる機会を無くしている。巨人が立つオペラシティでも、美術館はまだ再開せず、コンサートホールや新国立劇場の公演も予定が立っていない。

それでも巨人は歌うことをやめない。見る人、聞く人がいなくても、表現したい気持ち、表現する行為は誰にも止められないのだ。

・"Singing Man"、Jonathan Borofsky、1998