2020年6月3日(水)

Two Times II

東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティ

俯瞰

誰もいないエレベーターホールに、男が一人ぽつんと立っている。よく見ると奥にももう一人。Two Times(二倍)と言うとおり、全く同じ姿かたちのコピーだ。

写真で見ると、顔が暗くてどちらを向いているのかわからない。現地に行くまで、彼らは向かい合っているのだと思っていた。エレベーターを乗り降りする人たちに遮られて、見つめ合うことができない二人。コミュニケーションの断絶とか都会の孤独あたりが作品のテーマなのだろうと思っていたのだ。

近景

ところが、実際に行って見ると彼らは互いに背を向けて立っていた。外を向いてエレベーターに乗ろうとしている人を監視している、と言うには、立ち位置が離れすぎている。二人ではあるけれど、互いに相手の存在を意識せず(知らず?)に、別々の人生を生きている。

作者のAntony Gormleyは等身大の人体を用いた様々な表現で知られている。直島で見た"Sublimate IV"では、人体像が無数の直方体のピースに分解されて三次元のモザイクをかけられたようになっていた。彼自身を型取った鋳型で制作したと言うこの像は、むき出しの下半身もリアルに生身の人間が表現されている。実在の彼と彫刻になった彼が、二つの時間(Two Times)を生きている、とも解釈できる。

誰もいないロビーで孤独に佇む男。かつて、このロビーが人であふれていた時にはどんな感じだっただろうか。今はそんな二つの時にも思い至る。

・"Two Times II"、Antony Gormley、1995