2020年6月29日(月)

小留浦の太子堂舞台

東京都西多摩郡奥多摩町留浦320

太子堂舞台

奥多摩湖の奥、山梨県との県境に近い集落に太子堂舞台と呼ばれる農村演劇の舞台が残っている。まわり舞台や太夫棚のある大規模な舞台だったと説明板に書かれているが、数えるほどの民家しかないような山の中に大劇場とはビックリだ。

石仏

もちろん、歌舞伎座のような大劇場ではないけれど、下北沢の小劇場やライブハウスぐらいの規模はある。昔は今より人口が多かったかもしれないとはいえ、かなりの賑わいだ。

数少ない休みの時に、村の有志が演者となり、近在の衆が集まって貴重な娯楽体験を共有したのだろう。時には、旅の一座が立寄ることもあったかもしれない。火災に遭ってもすぐに再建されたというから、よほど楽しみだったに違いない。

昔見たNHKの大河ドラマに、年に一度の祭りに男女が集い、カップルが成立してそれぞれ闇の中に消えて行くというシーンがあった。思春期の頃だったので、その闇の中で何をするのだろうと妄想して悶々とした覚えがある。ここでもそういうイベントはあっただろうか。

今は達観した老人のように静かに佇むこの建物にも華やかな昔があって、悲喜こもごもの人々の営みがあったかもしれないと思うと感慨深い。

東京都教育委員会の説明板