愛だけを… / 雨に消える椅子
東京都港区六本木6-10 / 9 六本木けやき坂通り
久し振りに晴れた。朝から青空が見えるのは何日ぶりだろうか。昨日(8月1日)やっと東海と関東甲信地方に梅雨明け宣言が出た。
気象庁の記録によれば、東京で7月に雨が全く降らなかった日は19日の1日だけで、降水量は270.5o(平年値153.5o)。曇りがちで降ったりやんだりの天気が続いたので、日照時間は47.7時間しかなく、7月一ヶ月の記録としては、記録がある1891年以降で最小だったそうだ(平年値146.4時間)。
そんな日々に、あの椅子はどうなっていたのだろうかと思って、六本木に出かけてみた。
「雨に消える椅子」。雨の日に自転車散歩はできないので、実際に消えていたかどうかはわからないけれど、ガラスでできた透明の椅子の背には、まだ雨が流れているような模様が残っていた。
赤いリボンが踊るようなベンチは、ほかの日に見たなら愛する人に贈るプレゼントのリボンに見えただろう。でも今日は、長く日本列島に居座る梅雨前線に見えてしまう。各地に降らせた豪雨が、山を崩し、川を氾濫させ、人々を翻弄した。まさにその奔放で傍若無人なふるまいを表現しているかのようだ。
家を流されて呆然と佇む人に、「何もあげられないけれど、愛してる」という言葉は虚しく響くのか、心強く感じられるのか。
・"I Can't Give You Anything But Love"(愛だけを…) 内田 繁、2003.4.25.
・「雨に消える椅子」"Chair disappears in the rain" 吉岡 徳仁、2003.4.25.