アシジの詩人
東京都渋谷区代官山町17-7 代官山アドレス・ディセ北側
木の枝に青い鳥がとまっている。
詩人は手の上に載せた小鳥に、青い鳥に取り次いでもらいたいと頼んでいる。
わたしはあなたのように軽やかに歌を歌い、心の羽を広げて大空を自由に飛び回りたい。どうしたら良いか、そのすべを教えて欲しい、と。
詩人がどんなに言葉を尽くしても、彼の歌はバラバラと地面に落ちて形を成さない。足下には虚しく散った無数のアルファベットが積もっていくばかり。
日の光が当たると、詩人のステンレスの体は周りの景色を反射して美しく輝く。それでいいんじゃないの。言葉にしなくても、ありのままを全身で表現できているよ。そう言ってあげたいけれど、彼の耳には届くだろうか。
タイトルにあるイタリアのアシジ(アッシジ、Assisi)は多くの巡礼者が訪れるキリスト教(カトリック)の聖地で、サン・フランチェスコ大聖堂を中心に町全体が世界遺産に登録されている。その町と詩人にどういう関係があるのかはわからないが、歌いたくなるような美しい風景に恵まれ、神を賛美する気持ちが街中に溢れているのだろうと想像される。
彼の紡ぐ歌を、いつか私も聴いてみたい。
・「アシジの詩人」"Poet of Assisi" 鎌田恵務、2000