2020年10月7日(水)

記憶のシルエット

東京都中央区勝どき1-8-1 勝どきビュータワー

入口

テントの中に入りたい。

学生時代はテントをかついで山暮らしをしていた。子供時代にはまだ蚊帳(かや)があって、寝る時は蚊が中に入らないように気をつけながら裾から滑り込む。それが秘密基地に侵入するスパイのようで楽しかった。

外観

細かい切り絵細工が施されたプレートを何枚も組み合わせてテントにしたような形を見て、昔の思い出が走馬灯のようによみがえってきた。端をつまみ上げて開けた入口から、中に入れるようになっている。入ってみたいけれど、どうだろうか。

小さな子どもならともかく、いい年をしたおじさんが中に入っていたら怪しまれるだろうか。目の前の公園で遊ぶ子供たちも、駅へ急いで前を通り過ぎる人たちも、全く興味は無いようなそぶりだけれど…。

切り絵の図案には橋や水路、歌舞伎座など、少し昔の周辺の風景が織り込まれている。わたしにはこの土地の記憶は無いけれど、中からこの絵を見たら、蚊帳の中で見た夢の世界や山のテントから仰いだ星空などの思い出が連想されるんだろうな。

・「記憶のシルエット」"REMEMBRANCE SILHOUETTE" 土屋公雄 APT(KIMIO TSUCHIYA ART PROJECT TEAM)、2010