2021年4月21日(水)

水面の鳥

神奈川県横浜市西区みなとみらい3-1 横浜銀行本店ビル

ランドマークタワー

「水面(みなも)の鳥」と題されたこの作品。風に吹かれてさまざまに姿を変える様子が、時に、水面(すいめん)から飛び立つ水鳥の群れのようにも見え、また大きく羽を広げた一羽の鳥のようにも見える。

水面の鳥

あるいは、軽やかに舞い踊る新体操のリボンのようでもあり、ジャックがよじ登る豆の木にもなる。雷神となった龍が天に上る姿が現れることもある。

いろいろなことを想像しながら見ているのは楽しいけれど、どんな形に見えようとも、それで何かの役に立つわけではない。

「役に立つものに囲まれた街の中に、何の役にも立たない彫刻を置くことで、私達は救われるのではないか?」と、作者は制作意図を語っている。

草原に寝転がってさまざまに形を変えながら青い空を流れていく雲を見上げたり、湖畔に佇んで鏡のような湖面に時折りさざ波が渡ったり波紋が浮かぶさまを見つめていた時の、静かで穏やかな気分が胸の内に甦ってきた。この作品は、そういうことを都会の真ん中で思い出させてくれる装置になっているのだ。

最近、そういう体験をしていないなぁ。そう思って見上げた空は、雲一つ浮んでいない快晴だった。

・水面の鳥(みなものとり)、高田洋一、1993