2021年4月28日(水)

春に寄せて

東京都府中市緑町3-33 平和通り広場公園

少女

横浜・山下公園の「赤い靴はいてた女の子」像で知られる山本正道は、同様の少女像をいくつも作っている。みんなどれも似たような作風で代り映えしないと思っていたのだが、「府中の森芸術劇場東」交差点角にあるこの作品は雰囲気が違う。

風景彫刻

しどけなく座りこんだ少女と、その向こうに見える得体の知れないオブジェ。あれはなんだろう。

二本の足の上の丸くふくよかなものに挟まれて小さな穴が開いている。無垢で清らかな少女が性を知り、大人になろうとする不安定な時期には、こんなモンスターが夢に出てくることがあるだろうか。血を流し変わっていく自分の身体に戸惑い、物憂げに塞ぎこむ少女の心の闇を狙って魔物が襲いかかろうとしている。

もちろんこれはわたしの妄想に過ぎない。作者は一連の少女像とは別に「風景彫刻」と呼ばれる作品をいくつも発表している。この作品は、春の野に憩う少女と丘の上の二本の木(あるいは森)をモチーフにした風景彫刻だと考えるのが順当だろう。

作品の傍らには、視覚障害者が手で触れて鑑賞できるように、作品のミニチュア模型(マケット)置かれている。目の見えない方はこの作品から何を感じ取るのだろうか。わたしのような妄想をするだろうか。訊いてみたい気がする。

・「春に寄せて」、山本正道、1992

視覚障害者が手で触れて作品を鑑賞できるマケット (模型)