ゴリラビル
東京都新宿区歌舞伎町1-10-8 台湾同郷協同組合ビル
コロナ禍が収まらない。
東京では去年の4月7日以来3回目の緊急事態宣言が出されている。「お酒を出す店は閉めろ」「ネオンは消せ」(※)といった内容を「まるで禁酒法時代のようだ」と話したら、職場の若者から禁酒法を知らないと言われてびっくりした。
歴史の知識はもちろん、アンタッチャブルやゴッドファーザーなどこの時代を舞台にしたギャング映画も知らないという。麻生副総理のファッションがアル・カポネみたいだと言われても、何のことやらという感じだったらしい。
緊急事態宣言下、火が消えたように静かな歌舞伎町の一角で、ビルの上からVサインを送るゴリラを見つけた。エンパイアステートビルに攀じ登るキングコングというモチーフを下敷きにしたディスプレイだと思われるが、もうそれも若い人たちにはわからないかもしれない。
南洋の孤島・髑髏島からニューヨークに連れてこられたキングコングが、美女とともにエンパイアステートビルに登るクライマックスシーンが有名な映画「キングコング」の第一作目が発表されたのは、一世紀近く前の1933年、禁酒法廃止の年だった。
年をとって若い人と話が通じなくなったなぁと思うものの、斯く言うわたしも、親世代とは話が合わないことも多い。そうしていろいろなものが忘れられていく中で、いつまでも残るものはなんだろうか。
(※)東京都は酒類を提供する店に対する休業要請とともに、夜間の外出を抑えるため、街中の看板の照明やイルミネーション、ネオンなどの電飾を午後8時以降は消灯するよう各方面に要請している