2021年8月18日(水)

The Monument for The Bright Future TOKYO / 2021

東京ビエンナーレ2020/2021

明るい未来

わたしは原子力が怖い。

もちろん原子力爆弾(原爆)の暴力性も怖いけれど、わたしが本当に恐ろしいのはそれが「人力(少なくともわたしの力)では制御できない」ところだ。

火事ならば水をかけて消すことができるし、暴走する車も壁にぶつけるなりすれば止めることができるかもしれない。しかし原子力は、一般の人には想像もできないような複雑なシステムをもってしても完全に制御するのは難しく、一度動き出したら止めるのも容易ではない。

東日本大震災で被害をうけた福島第一原子力発電所は、大自然の脅威になすすべもなく蹂躙され、爆発の危機は回避されたものの、大量の放射性物質が放出されて周辺地域は人の住めない場所になってしまった。今はアンダーコントロールにあるという人もいるけれど、汚染水の処理問題を始め未解決の課題は多く、現場ではまだまだ何十年にもわたって緊張を強いられる作業が続けられることだろう。

ここに掲げられている「明るい未来」は、福島第一原発のある福島県双葉町にかつて掲げられていた「原子力 明るい未来のエネルギー」という標語から切り取られている。それを「明日の神話」で原水爆の恐ろしさを訴えた岡本太郎の「若い時計台」と並べることで、原子力の持つ二面性を表現しているのだと思う。

人類は簡単には制御できない事柄をコントロールすべを得て文明を発展させてきた。事故を恐れて飛行機に乗らなければ海外旅行ができないように、原爆を恐れて原子力開発をやめたら「明るい未来」は無いのかもしれない。しかしそれは、ある意味命と引き換えのことなのだと思う。

われわれはその覚悟をもって未来を見据えていかなければならないのだ。

(作品解説)