東日本大震災・原子力災害伝承館
福島県双葉郡双葉町大字中野字高田39
東日本大震災・原子力災害伝承館は、震災による福島第一原子力発電所の事故により多くの地域住民がふるさとを離れざるを得なくなった原子力災害について、後世に語り伝えていくための施設だ。
その中に、「原子力豊かな社会とまちづくり」と書かれた大きなパネルが展示されている。
震災前の人々にとって、原子力はバラ色の未来を約束するエネルギーだった。生活に必要な電気を作るだけではなく、関連産業を含めた雇用を生みだし、町を潤し発展させるエネルギーでもあった。かつて双葉町内の目抜き通りに架かるアーチに掲げられていたこの標語はそれを象徴するものだ。
それが震災によって一変した。こんなはずじゃなかったと思った人も多かったことだろう。原子力災害と津波災害は、まさにその点が違うとわたしは思う。
家をなくした、家族を失った、というだけではなく、信じていたものに裏切られたという思い。こうなってみると原子力開発に反対する人たちの言っていることもわかるが、以前はそんなことを夢にも思わなかったと葛藤している人もいることだろう。
今も原発と共に暮らしている人たち、あるいはこれから原発を推進しようとしている人たちがいる。この経験を踏まえて、何か彼らに伝えることがあるはずだ。伝承館の展示はそこのところを掘り下げていなかったように思う。
それがわたしには不十分な感じがした。