山元町震災遺構 中浜小学校
宮城県亘理郡山元町坂元字久根22-2
多くの伝承施設で当事者の体験談を聞くことは、オプションプログラムにされていることが多い。だから、わたしのように先を急ぐ旅人はそこを割愛して、通り一遍の表面だけを見てわかったつもりになって通り過ぎてしまう。
しかしここではそれは許されない。来訪者は半ば強制的にガイドの説明を聞かされ、ここで起きたことのすべてを知らされる。
東日本大震災が起こったあの日、海岸から数百メートルしか離れていない中浜小学校は、校舎の二階天井にまで迫る津波の猛威に襲われた。滅茶苦茶に破壊された一階部分がそのすさまじさを物語っている。
随所に設けられた説明を読みながら二階に上がると、ごく自然に立ち話をするようにガイドの方が寄ってきて当時の様子を教えてくれる。丁寧に作られた模型や映像で詳しい説明を受けた後、90名の命を救ったという屋上への避難を追体験することで理解はさらに深まっていく。
そこに押しつけがましさはなく、流れるように誘導されるところがこの施設の良くできているところだ。その総合的な見学体験の手法や施設の公開方法が評価され、2020年度のグッドデザイン賞を受賞している。