上田邸(旧忍旅館)
東京都台東区池之端3-3-19
不忍池から上野のお山の裾を回って国立博物館方面に向かう途中にレトロな洋館を見つけた。
洋館風というほうが正しいかもしれない。
イオニア式の渦巻き飾りを載せた柱が支える庇には、ラーメン丼にあるようなぐるぐる模様。三階にも柱が見えるが、こちらはドーリア式風だ。そして途中から角度の変わるマンサード屋根が載っている。
石造りのように見えるが、説明板によれば木造だというから驚く。確かに建物の側面を見ると、駐車場のある向かって左側は石造のようにデコレーションされているが、隣家に接した右側は何でもない板壁になっていた。
建築当時は忍旅館として営業していたという。かつては不忍池を中心にした湯島・池之端エリアが上野観光の中心だった。並びには森鴎外旧居跡に建てられた水月ホテル鴎外荘もある。珍しい洋館(風)を見に訪れる客も多かったようだ。
今では動物園や博物館・美術館の建ち並ぶ山の上に賑わいが移り、忍旅館も水月ホテル鴎外荘(2021年閉館)も営業をしていない。ほとんど人通りのない住宅街の片隅でひっそりと余生を過ご老建築は、往年の賑わいを懐かしみ夢に見ることがあるだろうか。