日中線記念館(旧国鉄熱塩駅跡)
福島県喜多方市熱塩加納町熱塩字前田丁602-2
栃木県今市から山形県米沢までを結ぶ東北縦断鉄道の夢は、東武鬼怒川線・野岩鉄道会津鬼怒川線・会津鉄道会津線・只見線・磐越西線・日中線と辿って、ここ熱塩駅まで来たところで途絶えた。その日中線も今は廃線となり、喜多方以北に鉄路はない。
たくさんの観光客で賑わっていたしだれ桜並木の喧騒もここまでは届かない。線路を取り払われ訪れるものもなくなった終着駅は、散り始めた桜に包まれて静かにたたずんでいた。
日中線記念館となった駅舎の中には、かつての思い出を伝えるたくさんの写真が飾られている。そこには日中線に縁のない人でも、どこかで見たことがあるかもしれない懐かしい風景が写っている。
波乱万丈の人生を送りながらも志半ばに倒れた主人公が物語のラストに、つらかった過去も過ぎてしまえば美しい思い出だと振り返るシーンがあるとすればこんな景色になるのかもしれない。雲一つない青空の下、舞い散る桜吹雪の中でそんなことを思った。
(参考)2023年の東京の桜開花宣言は3月14日、福島市は3月24日、共に観測史上最も早い記録でした。