嵐の中の母子像
広島県広島市中区中島町1-2 広島平和記念資料館本館前
激しい逆風に耐え、体を折るようにして母は嵐の中を進んでいく。父を戦争にとられ女手一つになっても、子どもたちだけは絶対に守るという強い意志が体中からみなぎっている。
最初に見た時、「嵐」は原爆の爆風だと思った。次に浮んで来たのは、敗戦後に満州から日本へ帰る道を歩む親子に打ちつける大陸の強い風。
周りの人から発せられる心無い言葉や理不尽な仕打ちなども嵐となって母子を襲ったかもしれない。
そのすべてと戦って、平和を願い、子どもたちに託す未来の明るいことを信じて母は進んでいく。
もしかしたら母はもう子どもを顧みる余裕もないぐらいいっぱいいっぱいなのかもしれない。それでも右手でしっかりと赤ん坊を抱き、幼い子どもを背負おうと懸命に左手を伸ばす。縮尺が間違っているのではないかと思うぐらい大きな手に、母の愛の力の強さを感じた。