明日を拓く
東京都渋谷区神宮前1-4-1 渋谷区立中央図書館
NHKの教育番組に「昔話法廷」というドラマシリーズがある。昔話に題材をとって裁判(裁判員制度)について学び、考える力を養うための番組だ。
「さるかに合戦」でカニを殺した猿の量刑に情状酌量の余地はあるのか、「三匹のこぶた」によるオオカミ殺害に正当防衛は認められるのか、というように昔話をそのまま受け入れてその内容に現代の解釈を付け加えたものがある一方で、現代ではありえない話として批判的にとらえているものもある。
例えば浦島太郎の物語では、乙姫が危険な玉手箱を使い太郎を殺害しようとしたとして殺人未遂の罪に問われる。鬼ヶ島を襲撃した桃太郎は強盗殺人罪、アリとキリギリスのアリは保護責任者遺棄致死罪、といった具合だ。
以前から、桃太郎が侵略戦争を正当化しているとして批判されるような例はあった。子どもの頃に親しんだお話が否定されるのは哀しいような気もするが、逆にはたとひざを打って納得することもある。今はいろいろな考え方があることを認めなければいけない時代になっているのだ。
渋谷区立中央図書館の前に置かれた「うさぎとかめ」の絵本には、「絶えざる歩み、うさぎに優る。(亀)」と書かれている。それを素直に受け取れない自分は、多様性に思い至る思慮深い人なのか、何でも物事を裏読みしてしまうひねくれ者なのか。
迷っている。