2023年7月19日(水)

海景 - 太平洋、三宅島沖

北緯34.3度 東経139.6度 付近

甲板

八丈島・底土港を朝9:40に出航した橘丸は、10時間後の夜19:40に東京・竹芝桟橋に到着する。航空機なら羽田からシドニーまで行ける時間だ。

窓

そのほとんどの時間を、携帯の電波も届かず、水平線の他には何も見えるものがない海の真ん中で過ごす。

実は、今回の八丈島行きで一番楽しみにしていたのが、帰路の船旅だった。

何もすることがなく、ただぼんやりとしているしかない時間。日々の生活の中で、アクシデント以外でそれを体験することは難しい。その非日常性を味わいたかったのだ。

杉本博司が世界の海をモノクロ写真で撮った「海景」シリーズをまねて、海の写真を撮ってみた。

海景シリーズは、「古代人が見ていた風景を現代人も見ることは可能なのか」という問いを発端として生まれたのだそうだ。

何も人工物が見えない景色。と同時に、今こうして無為の内に過ごしている時間も古代人に多少は近づいているかもしれない。

直島で初めて見た時にはわからなかった作品の意図が、今は少しだけわかるような気がする。